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2015年07月05日

正しい動作分析に潜むリスク

11639694_738421629602218_952286225_o皆さんは治療やトレーニング中、動作分析を行う際に選手に以下のような言葉をかけていませんか。
・○○筋が硬い、○○筋がうまく使えていない
・○○の関節の動きが悪い
・○○と○○のバランスが悪い
知識や経験が増え、選手の欠点がわかるようになると言いたくなる言葉です。

 
今回は私が実際に経験した、選手に悪いとこと伝えてしまった結果パフォーマンス低下を招いたケースを紹介します。
福岡のJARTA認定スポーツトレーナーの井上です。
 
以下、私の体験談です。
 

【トレーナーが選手に与えた不安】

高校の野球部でピッチャーをしていたA君は、チームトレーナーにあることを言われ私に相談に来ました。
言われたこととは『股関節の動きが悪い』『体幹が弱い』ということです。
そのトレーナーは月に1回トレーニング指導やコンディショニングに来ていたそうです。
プロ野球選手のトレーニング指導実績もあり、監督・選手の信頼もあったようです。
トレーナーからは股関節のストレッチや体幹トレーニングをそれぞれ2~3種目指導されていました。
しかしどの程度ストレッチとトレーニングを行い、どのような状態になれば良いのかまでは伝えられていませんでした。
 
練習中も試合中もその2つのことが常に気になり、今までどのように投げていたのか分からなくなったとのことでした。
ヒットを打たれること、フォアボールを与えることなど全てをその2つのせいにしてしまい、それに伴って成績も悪くなったそうです。
 
相談の内容は『股関節の動きにくさ』を改善し、『体幹の弱さ』を克服したいということでした。
チームトレーナーよりも経験の浅い私の見た限りではありますが、A君にはその他にも改善させるべき部位・動作が多々ありました。
しかしA君の頭には、指導実績のあるチームトレーナーに言われた『股関節の動きの悪さ』『体幹の弱さ』という言葉が常にあり、
当初は私の提案したトレーニングに理解を示してくれませんでした。
 
結局そのトレーナーはその後数回来ただけで、チームを離れることになったそうです。
A君にとって『股関節の動きの悪さ』『体幹の弱さ』とは何のことだったのか答えを出さないまま。
A君に必要以上に不安と混乱を残したまま。
 
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【動作分析がゴールでない】

ここで私が言いたいのは『動作分析を間違えるな』ということではありません。
それはトレーナーとして最低条件だからです。
選手の将来を担うトレーナーが、軽率な発言をすべきではないということです。
今回の場合、もしかすると動作分析の結果はそのトレーナーが言った通りだったのかもしれません。
ただA君に不安と混乱を与えてしまったのは事実です。
さらにその結果としてパーフォーマンス低下を招いたのも事実です。
そしてそのような事実は我々含めてどのトレーナーにもおこる可能性のある事態でもあります。
よかれと思って指導した内容や声かけがマイナスの学習になることもあるという観点はJARTAセミナーでも繰り返しお伝えしています。
 
そして現在JARTAの講習会では動作分析に非常に重きを置いています。
それは動作分析ができていなければ、何が問題で、何を改善させればパフォーマンスが向上するのかが的確に指導できないからです。
的確でない動作分析は、選手に無駄なトレーニングをさせるリスクにもつながります。
 

【全てはパフォーマンスアップのために】

前述したとおり正しい動作分析は最低条件になります。
その結果をどう選手に伝え、欠点をどのように克服させ、最終的にいかにパフォーマンスアップにつなげるかを考えながら指導がする必要があります。
事実をそのまま選手に伝えるだけでは、その選手に大きな不安だけを与える可能性があるからです。
次回の指導から言葉がけ、伝え方、表現などを工夫してみると、それだけで選手のパフォーマンスが上がるかもしれません。
 
 
最後までお読みいただきありがとうございます。