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2014年02月22日

筋肉を緩める方法やポイントを間違えることによる弊害

筋肉は緩んでいた方が使いやすそう。なんとなくそれに気づいている方も多いとは思いますが、緩めるポイントを間違えることによる弊害もあるのです。
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これはなでしこジャパンのゴールキーパー、海堀あゆみ選手とのやりとりを例にとってみましょう。
海堀:「筋肉って緩めた方がいいんですよね?ケガしないとか動きやすいとか。」
中野:「そうです。前から教えていた通り。どうして今頃そんな質問?」
海堀:「以前、別のトレーナーさんにマッサージを受けて、その時はすごく筋肉柔らかくなったんですけど、終わった後すごくふわふわした感じになったんです。」
中野:「それはいい感じだったってことかな?」
海堀:「いいえ。真逆です。すごく動きにくくなったんです。ふわふやし過ぎてる感じがして・・・。次の日試合だったんですけど、朝からすごくだるくて。緩めるって話で、そんな経験思い出したんで疑問に思ったのです。」
このあと、海堀選手にはその出来事の理由を説明したのですが、みなさんもこのような体験、もしくは患者様やクライアント様にこんな体験させてしまったことはないでしょうか。
例えば整骨院などでしっかりたっぷり揉みほぐされて、そのときはふわふわにほぐれた感じがしたけど、なんか軽いだけで安定感がないような感じがします。そして翌日はすごくだるくなってしまう。
 
この原因がわかりますか?
このような事例はスポーツ現場では非常にたくさんありますし、一般レベルでも多くの方が経験されていることかと思います。
 

考えられる主な原因
  • いわゆるアウターマッスルばかりが緩んで、肝心な深部を緩めることができていない。つまり、「アウターマッスルが固まってしまっている原因」に対処できていない。
  • しっかり緩めようとして強く揉みすぎることで筋繊維が破壊され、だるさや痛みを誘発。
  • 姿勢やバランス機能を考えずに、とにかく緩めることばかりを優先してしまい、不安定になっている。

要するに、施術者側が姿勢保持機能や身体の動きについての理解が乏しいことが原因です。
 
当時、海堀選手にその処置を施した方は、恐らくこのようなことをやってしまっていた可能性が高いです。
 
さらに、もっと重要なミスは、「翌日試合があったにも関わらず、それに見合った施術をしていないこと」です。
翌日試合があるということは、そこで適切な筋出力を発揮できるような状態をつくらなければならないにも関わらず、それを理解せずにとにかく緩めてしまうと、このような現象が生じるのです。
 
ですので、私は普段から緩めることが重要とお伝えしていますが、「適切な部位を、適切な度合いで」ということもご理解いただきたいと思います。
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ちなみに海堀選手には、そのやりとりの後、実際に必要な部位の筋の収縮力を高める施術(使えるようにするための施術)も体験してもらい、身をもって「試合に臨む身体」を理解してもらいました。
我々治療家は「その時の相手の状態」だけではなく、「その先の状態」も考慮する必要があるということです。
 

大腰筋の重要性

具体的に、このような調整時に特に重視しているのは大腰筋です。
この筋が機能した上での身体運動でないと、その身体が持っている十分な機能は発揮できません。
 
ここで重要なことは、大腰筋という「筋」だけにフォーカスして大腰筋だけの調整を行うと上手くいきません。
考えるべきは、大腰筋の起始と停止、拮抗筋そして大腰筋の走行の間にある関節群です。
 
起始と停止部に関連する組織として代表的なものは横隔膜などがありますが、この筋群が固まってしまっていると当然大腰筋は本来の働きを発揮できません。
また、拮抗筋に関しては、主動作筋と拮抗筋の関係を考えるべきです。これらはお互いに刺激し合う関係性にあり、主動作筋が刺激されると同時に拮抗筋にも刺激が入り、働きやすくなるという特徴があります。
 
大腰筋の拮抗筋はハムストリングスの上部です。あくまで上部であり、ハムストリングスでもハムストリングス下部ではありません。(下部の拮抗筋は大腿四頭筋で)
ですから大腰筋の調整時には、ハムスト上部が働きやすい環境も意識的に作ります。
 
最後に大腰筋の走行に挟まれる関節群ですが、胸椎12番から腰椎5番までの椎体、仙腸関節、股関節がこれにあたります。
筋の走行の間にある関節群が固まっていると、当然その筋は機能しなくなります。硬い棒にゴムがへばりついているところを想像するとわかりやすいかと思います。
 
選手の身体を目の当たりにすると、どうしてもアウターの硬さに目が奪われがちになりますが、これらのポイントを十分に調整するだけでアウターの不要な緊張は解消できることも多々あります。
ぜひこういったポイントをまず優先的にチェックしてみて下さい。