野球の投手にとって重要なこととは?局所ではなく全体のとらえ方

先月東京のJARTAオフィスにて、プロ野球選手の岡本篤志投手、野上亮磨投手のトレーニング指導を行ってきました。

今回は、私がどのような考えでプロ野球の一線級の選手たちである彼らに指導しているのか、お話したいと思います。

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プロ野球の投手が年間を通じて一軍で活躍するために必要なことは何かわかりますか。

まず怪我をしないことです。これは当然のことです。

 

怪我の要因としては、疲労の蓄積です。もっというと一部分への疲労の蓄積です。年間通じてローテーションを守ることは、身体的にも精神的にも想像を絶するストレスがかかります。

どんなに身体の使い方が良い選手であっても、登板が続けば疲労してきます。

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疲労が蓄積しやすい代表部位が肩や肘です。これも周知の事実です。

投球における微細なストレスの繰り返しが疲労や痛みを発生させます。ですので、肩や肘における疲労や硬さ、痛みを取り除いてやるのは「当たり前」です。

 

ここで私たちトレーナーが考えるべきことがあります。

それは「なぜ肩や肘に疲労が溜まったのか」です。

 

なぜ肩や肘に疲労が蓄積したのか?その理由を考える

投球を考える上で前提となるのが、投球は全身運動だということです。

それも指先をハイスピード・ハイパワーだけでなく非常に正確に操作することが要求される非常に高度な運動です。つまり、全身の連動した運動が、「結果として」腕に伝わるのです。

このことを理解した上で選手の身体と動きをみる必要があるのです。

 

「なぜ肩・肘に疲労が蓄積したのか」

 

この問題を解決する鍵は、実は肩や肘以外にあることが多いのです。

代表的な例を挙げると腰です。もっというと仙骨・脊柱です。

投手の腕は、単独に振られているわけではなく、脊柱の捻れと捻り戻しの際に発生する力を利用して高速で振られています。

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このとき、より効率よく上肢に力を伝える際に必要となるのが回旋系伸張反射(RSSC)。全身の回旋筋群を使った筋反射です。

この反射を使うことで全身にストレスを分散し、さらにハイパワーやハイスピード、再現性や正確性を実現することができます。

 

そしてこのRSSCの大前提となるのが、筋肉が最大限ゆるんでいることなのです。

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緊張した筋肉ではこの機能は絶対に使いこなせません。わかりやすくいうと、脊柱や仙骨周囲の関節や筋肉が硬くなっていると、RSSCが使いにくくなるのです。

RSSCが使えない状態で高速で腕を振ろうとすると、それは「力み」につながるのです。

 

力んで投げようとするとどうなるか。当然体幹部と腕の連動性は著しく低下し、そのつなぎ目である肩に負担が集中します。また、肩の動きがスムーズでないと当然肘にもストレスがかかります。

一球や何回かの登板でしたら問題にならないようなこのロスは、投球機会が増えるにつれ、その蓄積した年数が増えるにつれ気づかないレベルで蓄積していきます。

 

そして本人も気づかないうちにパフォーマンスを低下(故障)させることになります。

 

やや局所的なお話をしましたが、本来重要なことは部分ではなく全体の現象です。

 

投手のパフォーマンスアップに必要なこと

次に投手の動き全体をとらえてパフォーマンスアップにつなげていくために必要な考え方についてです。

さきほど全身の回旋筋群を総動員してパフォーマンスに利用することの重要性、それが阻害されたことによる弊害についてお話しましたが、投球という動作においては、少し部分的な点に関する内容です。

 

いつも話していることですが、スポーツ選手にとって可動域や筋力、バランス、パワー、スピードなどは、それらが向上したとしても、パフォーマンスそのものが向上していなければ全く意味がありません

 

痛みについても同様で、痛みがとれるかとれないかの問題ではないのです。痛みがとれても、本来のパフォーマンスが発揮できなければその選手にとって無意味なのです。

痛みの発生機序や除去方法の考え方も重要ですが、やはりパフォーマンスアップについての考え方は知っておいてもらいたいのです。

 

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投手のパフォーマンスアップについて考えてみましょう。

まずこれは全ての競技で共通することですが、立った状態で、全身の筋緊張が最小限になっているかです。これは1次姿勢という考え方です。

 

1次姿勢は運動をとらえる上で非常に重要な考え方です。

立位で既に不要に緊張が入っているような状態では、それよりも難易度レベルが高いはずである投球の時に良い状態で動けているはずがないということです。

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ですからJARTAでは必ず初めに立位の状態を確認します。そして問題があれば優先順位を高くして対応します。

 

次に全身の連動性です。

投球動作において、理想像を非常にシンプルに考えると、「下肢—仙骨・脊柱—肩甲骨—腕」が順序よく動き、連動性と再現性、スピードを獲得することになります。

 

そして非常に抽象的な表現となりますが、極意といえるのが

「腕の重みを使うこと」

「身体を中央でスライドさせること」

「脊柱を前後に波打たせること」

これがハイパフォーマンスの鍵になります。

 

これらの要素は、今までは各々の選手のセンスに依存する度合いが高かった部分です。なぜなら、既存のトレーニング理論や方法ではこのような部分を鍛錬する手段が存在しなかったからです。

しかしそれでは全体のレベルアップは図れませんので、JARTAの講習会ではハイパフォーマンスを生み出す原理、原則についても詳しくお伝えするようにしています。

 

まとめ

投手のパフォーマンスアップに重要になることをお伝えしてきました。

回旋系伸張反射などあまり聞き慣れない言葉もでてきましたが、アスリートのパフォーマンスアップには必要な要素です。

投球は流れのある動作となりますので、局所や一場面にとらわれないことが重要です。