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2016年12月25日

トレーナー・指導者に必要な抽象化能力

トレーナー・指導者には多くの能力が求められますが、その中でも物事の本質を見抜く力(選手やチームなど)はとても重要だと思います。
 
今回は「物事の本質を見る力」を「抽象化能力」とともに認定講師の吉野直人がお伝えしていきたいと思います。
 
抽象化能力という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

抽象化能力はスポーツに限らず、どの分野においても一流の人がもつ思考と言われています。
 
優れた指導者やトレーナーは選手の問題を的確に捉えた上で指導が出来ています。
 
つまり、「物事の本質を見抜く力」が優れているのだと思います。
 
これがなければ、選手の努力の方向性を間違わせてしまう可能性があります。
 
指導者・トレーナーは、選手の努力の方向性を正しく導くのが仕事です。
 
そこで「本質を見抜く力」つまり「抽象化能力」が必要となります。
 
 
では、抽象化とは何か??
 
 
抽象化を一言で表現すると、
 
「枝葉を切り捨てて幹を見ること」であり、
 
「特徴を抜き出す」こと。
 
そして、他のものと共通する特徴を抜き出し、ひとまとめにすること。
 
 
共通する部分が、その物事の「本質」といえます。
 
 
 
 
では、抽象化能力を「投手のトレーニング」というテーマで考えていきます。
 
トレーニングメニューを組み立てる前に、指導する投手の目標や課題を設定する必要があります。
 
まずは、その競技・ポジションのトップレベルの選手数人の分析をするのが良いと思います。
下のレベルの選手だと上達の方向性を誤る可能性があるからです。
(トップレベルの選手の分析と、自らが戦うカテゴリーのトップレベルの選手を比べてみるのは良いと思います。)
 
そして、その分析から共通点(幹)と相違点(枝葉)を割り出します。( 図1)
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とりあえずここでは、トップレベルの投手の共通点を「コントロール」として話を進めていきます。
 
「コントロール」が投手に必要な能力であるのは間違いないと思いますが、
課題が「コントロール」だとあまり具体的なトレーニングメニューとは言えません。
 
課題の抽象度が高すぎると、実効性が低くなる。
 
となるので、次に「コントロール」の優れた投手の具体的な共通点を探していきます。
 
例えば、「脊柱、仙腸関節、股関節などの柔軟性」などといった具体的な共通点が見つかれば課題として取り組みやすくなります。( 図2)
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つまり共通点を抜き出す作業も、目的・方向性によって変わるということです。
 
現場でもこの様な目標をよく耳にすることがあります。「コントロールを良くしたい」とか「長打を打てる様になりたい」などです。
 
これらの目標は間違いではありませんが、少し抽象度が高く実効性が低い目標になる危険性があります。(その目標をより深く考えていれば問題ありません)
 
大切なのは「なぜ?」「そのためにどうするのか?」 という事をできるだけ深く考えることです。
 
これはつまり、抽象化(なぜ?)と具体化(そのためにどうするのか?)です。
 
 
では「コントロールを良くする」を具体化してみます。
 
→「再現性の高いフォーム」
→「RSSC(回旋系伸張反射)の利用」
→「全身の緩み(投球に必要な筋肉を必要最低限でコントロールする)
→「脊柱、仙腸関節、股関節などの柔軟性」
 
これは一例ですが、具体化することで課題が明確になっています。
 
そして本質的な目標から具体的課題までが階層構造となることが望ましいです。( 図3)
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逆に、下から上(具体から抽象)へ考える事も必要ですので、どちらの方向へも行き来できる思考を身につける事が大切です。
 
トレーニングの話は今回の趣旨ではありませんが、1つだけ述べておくと具体的課題のトレーニングにおいては、上位階層との関係性と方向性の確認は常にしなければいけません。(目的を見失わないという意味で)
 
最後に、
 
本質が見えるからこそ、具体的な行動に移すことができる。
 
 
抽象化能力は、スポーツ現場でなくとも、普段の日常や仕事でも意識的に使うことをおすすめしたいと思います。
 
 
少し長くなりましたので、今回の抽象化能力についてのお話はこの辺までとさせて頂きます。
難しい表現もあったかもしれませんが、指導者・トレーナーに使える形として、抽象化能力の概念の一部を紹介しながらお話しさせて頂きました。
 
 
また次の機会で、もう少し掘り下げた内容をお伝えできればと思います。
 
 
 
最後までお読み頂きありがとうございます。
 
 
 
参考・引用文献
「アナロジー思考」 細谷功 著
「具体と抽象」 細谷功 著