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2015年11月07日
大腰筋機能を引き出すインナースクワット
JARTAのセミナーでは、スポーツ現場での考え方やテクニックの習得の他に、選手の評価やトレーニングに用いるセンタリングトレーニングと言うものも学びます。更にそれらのトレーニングはトレーナー自身の身体作りにも用いられます。
JARTA認定スポーツトレーナーの田中紀行です。
(スピードアップを目的として小学生にインナースクワットを指導)
トレーニングを指導する際に、トレーナーとして下手な手本をすることは、選手に対して説得力がなくなるだけでなく、選手との信頼関係を築く上でもマイナスになってしまいます。反対に選手以上にトレーニングを上手く実施できれば、信頼関係以上に選手のモチベーションを引き出す事ができます。
今回は、JARTAアドバンスⅠで学ぶインナークワットのポイントをお伝えします。
インナースクワットの意義と手順
インナースクワットは、一次姿勢である立位を構築すると同時に重心位置や身体がどの程度ゆるんでいるかの指標にもなります。また、その動作は脊柱、骨盤と股関節の連動性を求められる動きであり、基本的なトレーニングとしても重要な位置づけとなります。
手順は、まず、内踝に荷重をして立ちます。内踝に荷重する意味は、いわゆる『骨で立つ』と言う状態で、余分な筋肉を使用していない状態です。この状態で上下の軸を意識して重心位置を崩さずにしゃがみ込みます。
(内踝に荷重を促すためのサモン)
このトレーニングは仙骨を立てた状態をキープし、上下動の際も腰を反らさないことがポイントとなります。
ポイントの意味を考える
仙骨を立てた状態をキープし、上下動の際も腰を反らさないと言うのはどのような意味を持つのでしょうか?
今回は、スポーツ選手のパフォーマンスではとても重要な大腰筋の視点から考えて見ましょう。
大腰筋は起始を第12胸椎 第1から第5腰椎とし、停止は小転子です。股関節屈筋群としては最も強くかつ長い筋肉になります。基本的な働きについては、股関節の屈曲、外旋作用があるのは周知のことですが、内転については小転子の先端が下肢の機能軸(骨頭-膝蓋骨-内外果の中間)上に存在することから作用については意見が分かれるところです。機能軸上に小転子があるという事は、仙骨を立てた状態から大腰筋の遠心性収縮により腸恥隆起方向に骨頭が引っ張られると共に、骨頭を臼蓋に安定させる働きとして重要である事が考えられます。
実際に研究レベルでも大腰筋の作用が報告されています。
股関節屈曲角度 0-15度 大腿骨頭の圧迫・安定化(遠心性作用)
股関節屈曲角度 15-45度 脊柱を直立させる(遠心性作用)
股関節屈曲角度 45-60度 股関節屈曲(求心性作用)
(参考:姿勢制御における大腰筋の役割に関する実験研究:小澤ら 2006年)
インナースクワットの利点
インナースクワットの際に腰を反らさずに仙骨を立てた状態にしておくという事は、仙骨を立てることにより大腰筋を経て小転子を屈曲、外旋方向に導きやすくすると同時に上記の股関節の安定性も期待できるため、トレーニングを通して脊柱、骨盤、股関節の連動した動きを獲得しやすくなります。また、この構造を理解しておくことで股関節を捉える力が上がることが考えられます。股関節を捉える力は、スポーツにおけるパフォーマンスの質を向上させる必須条件です。
注意点
今回の文章を読んでいただいて、知識のみではインナースクワットは上達しません。インナースクワットをアシストするウナ荷重、鳩尾の可動、鳩尾と仙骨・股関節の動き、膀胱経等へのアプローチも重要になります。トレーニングの形に捉われず、マイナスの学習(トレーニングが逆効果になること)をしないように注意してください。
お知らせ
12月6日(日)に東海地区では今年最後となるベーシックセミナーを開催致します。今回のセミナーは私が務めさせていただきます。JARTAのコンセプトやテクニックと共に現場での経験や活用方法等も合わせてお話ししたいと思います。興味のある方は、是非会いにきてください!
セミナー情報