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2015年09月14日
そのトレーニングはパフォーマンスを低下させていませんか?
トレーニングを指導している最中、選手のパフォーマンスが低下するといった場面に遭遇したことはありますか?
私はサッカーをしている小学生のトレーニングをサポートしているとき、このような場面に遭遇しました。
今回は私の体験談を紹介しながら、その場面をどのように対処したのかをお伝えします。
JARTA認定講師の鹿島です。
この小学生とは「動き出しを速くしたい」といった要望がありJARTAからの紹介でサポートが開始になりました。
要望も含めサッカーのパフォーマンスアップに繋げるためには股関節の使い方を向上させることが必要と判断し、「股関節を捉える」ための前提条件を整えつつトレーニングを進めていきました。
股関節の使い方に変化が生じてきた状況で新たなトレーニングとして「フローティングダウン」を開始したとき、「右足で立ちにくいです。なんでだろ?グラグラする。」といった反応がありました。
フローティングダウンとは
フローティングダウンとは重心移動を行わずに足を持ち上げる動きです。
サッカーのトップ選手の動画を見ると、ペナルティエリア内のシュートやシザーズフェイントなどの足を跨ぐ動作、ディフェンスで相手と距離を縮めるときなど様々な場面でフローティングダウンのような足の使い方をしています。
トップ選手が行っている動きといった視点からサッカーのパフォーマンスアップには必須の動きではないでしょうか。
この動きを習得するためには、大腰筋の格定力(局面に応じた身体の使い方)が必要です。
大腰筋が機能する為に必要な要素は、
・脊椎の可動性(特に下部胸椎から腰椎)
・仙腸関節の可動性
・胸郭の可動性
・股関節の可動性
・大腰筋の柔軟性、筋出力
・ハムストリングスの柔軟性
・横隔膜、骨盤底筋の柔軟性
要素は他にもありますが、この程度の条件が整った上でトレーニングを行う必要があります。
トレーニングの要素を減らす
サポートしている小学生の場合、「股関節を捉える」ための前提条件を整えつつトレーニングを続けていたので、上記にあげた要素はある程度整った状態でした。
右足を持ち上げる動きは上手く行えていましたが、左足は大腿直筋による持ち上げで、軸足側に骨盤が回旋しつつ後傾してしまいます。右足が膝優位の支持となることで「右足で立ちにくいです。なんでだろ?グラグラする。」といった反応に繋がったのではないかと思います。
今回の場合、左の大腰筋を求心性に使うといった要素が不足していると考えました。
トレーニングの要素を減らし、立位で単純に股関節を屈曲外旋外転方向に動かすといったことを試しましたが動作は変わりません。
より単純な動きにして大腰筋を求心性に使うことに意識を向けられるように背臥位で大腰筋のトレーニングを実施しました。
その後はフローティングダウンの動きはまだまだ不十分ですが、「右足がグラグラして立ちにくい」といった反応は改善がみられています。
今回の体験を通して、指導するトレーニングの運動構造やトレーニングを構成する要素を理解していないと、トレーニングを提供することでパフォーマンス低下を招くリスクがあると改めて感じました。
見よう見まねの動きを模倣しているだけでは今回の場合、大腿直筋を過度に使うようなトレーニングになってしまい、結果的に軸足の脚や膝の不安定性を生む可能性があるという事です。
無駄な努力をさせずに選手をパフォーマンスアップさせるには、トレーニングと競技との関係や身体環境を整えることも勿論必要ですが、提供するトレーニングの構造を理解し、分解や統合しつつ選手のその時の状態に適したトレーニングを選択する必要があると思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。