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2020年10月31日

トレーニングがパフォーマンスアップにつながらない理由

文:平山鷹也

 
毎日頑張ってトレーニングを行っているのにパフォーマンスが変わらない、
ストレッチをやって柔らかくなっているのにプレー中は硬くなってしまう。。。
 
 
このような悩みを持つ選手は意外と多い。
 
 
そんなとき、トレーナーとして考えるべきことは何か。
 
 
今回はトレーニングを指導するトレーナーの方に向けて、
トレーニングを指導する際の一助になる考え方を共有したい。
 
 
 
トレーニングがパフォーマンスアップにつながらない理由の1つとして、
難易度が適切でないことが考えられる。
 
 
難易度とは、非常に多くの要素によって決定される。
 
 
JARTAの認定トレーナーコースでも、トレーニング理論Ⅰの中で解説している。
 
 
コース内では、支持基底面という観点から難易度を考えてもらっている。
 
 
もちろん支持基底面が広ければ難易度は下がり、狭くなれば難易度は上がる。
 
 
 
例えば、JARTAトレーニングの1つである「八の字」。
 

 

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上半身の可動性や連動性を引き出すトレーニングだが、
最もベーシックなやり方は動画のように肩幅よりも少し開いた、
パワーポジションと呼ばれる姿勢で行う方法である。
 
 
これを支持基底面を狭くすることで難易度を上げようとすれば、
例えば両足を前後にそろえるタンデムや、
もっと狭くするなら片脚立ちで行うことができる。
 
 
支持基底面が狭くなるほど、
上半身の動きの中心がぶれないように行わなければ倒れてしまう。
 
 
支持基底面を狭くする意味について、一例をあげて考えてみる。
 
プレー中に上半身が固まってしまう選手に対して、肩幅の八の字を指導したとする。
 
結果としてトレーニングは上手くなったがプレー中にはやはり上半身が固まってしまう。
 
 
このようなケースは結構多い。
 
トレーニングは上手くなったがプレーは上手くなっていない。
 
 
この原因を難易度という観点から考えていく。
 
 
ここで八の字が上手くなったというのは、
「両足のパワーポジションでは」
上半身を動かせるようになったということである。
(あくまでも支持基底面という観点では)
 
そこでタンデムや片脚立ちで同じように八の字をしてもらうとする。

 
そうすると動きが遅くなったり、上半身が固まって動きが小さくなったりする。
 
 
ここではじめてこの選手の伸びしろが明確になる。
 
 
不安定な状況下で上半身を固めることでバランスをとろうとしているのだ。
 
さらに深掘りすると、その原因が股関節や足部の機能不全、身体感覚の低下などにいきつくかもしれない。
 
 
支持基底面が狭くなることで、
バランスをとりながら上半身を動かすというデュアルタスクになる。
(2つ以上の能力を同時発揮することを、JARTAではアブレスト能力と呼ぶ)
 
 
今回の例で挙げた選手の場合、上半身が固まってしまうことが問題ではなく、
「バランスを取りながら上半身を動かすこと」が伸びしろだったとわかる。
 
 
この選手に対して、
「安定した状態」で上半身を動かす練習だけではパフォーマンスにつながりにくい。
 
 
それがわかればバランス能力について評価が必要かもしれないし、
他のトレーニングも必要かもしれない。
 
 
今回はわかりやすくするために支持基底面だけで考えてみたが、
他にも難易度を構成する要素はたくさんある。
 
 
運動スピード、移動量、重りの有無、モーメントアームの長さ、外乱、道具の有無。
 
 
様々な観点から難易度を調整していくことで、
その選手にとってプレー中の伸びしろと一致した反応がでるものを探していく。
 
 
それを改善することができればパフォーマンスアップにつながりやすい。
 
 
 
しかし適切な難易度設定をすることは、言葉で言うよりも難しい。
 
 
簡単すぎる難易度で行っていたり、
逆に難易度が高すぎて目的とした運動が引き出せなかったりしていることが意外と多い。
 
 
難易度を構成している要素を自分なりに整理して、
どの要素をどのくらい変えると、どんな反応が返ってくるのか。
 
 
トレーナーはこの繰り返しによって引き出しを増やしていくことが求められる。
 
 
 
 
今回は難易度設定からトレーニングとパフォーマンスの関係について考えてみた。
 
 
もちろん難易度設定だけで必ずパフォーマンスを上げられるわけではない。
 
しかし、スポーツパフォーマンスとは非常に複雑な運動の組み合わせとその連続である。
 
そしてトレーニングはその要素の一部を切り取って行うものだ。
 
トレーニングを指導する我々は、
パフォーマンスとトレーニングの関係を考え続けなければならない。
 
 
それが、トレーニングをパフォーマンスにつなげるコツだ。
 
全ては、パフォーマンスアップのために。
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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