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2019年07月14日

「勝利の再現性」

文:米沢康平

トレーナーとしてチームに関わっている以上、目の前の試合や大会に勝利した時には嬉しいはずです。逆に負けてしまった時は、悔しさとともになぜ負けてしまったのかを分析することも多いかと思います。今回は勝利した時の分析を次の試合や大会に活かせるための取り組み方の一例をご紹介します。
 
『勝利を分析する』
 
私自身も岩手県の盛岡大学附属高校野球部に関わり、甲子園帯同を経験しました。初めて帯同した甲子園ではベスト16。同校史上初となるベスト16という結果に選手、スタッフの方々と喜びを分かち合いました。しかし、ベスト8をかけた試合で負けてしまったという悔しさは大きく、なぜ負けてしまったのか必死になって分析しました。その時に一つ気付いたのは、それまでは勝利した試合の分析を細かく行っていなかったということです。
 
実際、負けた試合後には選手と細かい自己分析を聞くことができ、次回の修正点を共に導き出すことをしていましたが、勝利した試合では「調子が良かった」「身体が軽かった」などの抽象的な表現しか出てこず、具体的な内容まで掘り下げることをしていませんでした。
 
勝利することはとても嬉しいことなのですが、トレーナーとして喜んでばかりではいられません。「なぜ」勝利することができたのか、「なぜ」その大事な試合で最高のパフォーマンスを出すことができたのか。これらの要因を掘り下げていくことでチームとして成長できると思いますし、この作業をいかに大事にできるかが成長の鍵となってくると思います。負けた時に振り返って敗因を分析することは多くのチームがやっています。次に活かすために、他のチームに差をつけるためにも大事です。しかし、勝利した際にそれを偶然のものにしないために、勝因を分析するという作業も大切なことです。
 
いわゆる「調子が良い」状態はなぜ作られているのか、試合で結果を残せたのはなぜなのかなど、日頃からポジティブな要素にも目を向けながら分析を繰り返しました。
 
翌年の甲子園にも帯同できたため、前大会で分析できたことを元にチャレンジすることができました。結果としてはベスト8。もちろん喜びは大いにありましたが、心の中には「まだやれることがあったのでは?もっと結果を出すためには何が必要だったのか?」などの悔しさもあり、当然容易に勝てるような大会ではないと改めて実感させられました。
 
単純作業ではないこの地道な分析を繰り返すことが勝利の確率をより高いものにすると思います。
 

 
『分析方法の一例』

最後に私自身が取り組んだ分析の内容をいくつか紹介します。

 

  • ウォーミングアップしている時の選手自身の状態

試合で活躍できた選手は、「今日は朝から体が軽くて調子が良かったです」ということが多いです。
そのため、ウォーミングアップに入る前に選手自身の評価と私からの客観的な評価を統合したうえで、どこに重きを置いてウォーミングアップをしていけば良いか決めました。
また、そのやり取りを繰り返していき、選手自身がセルフチェックでその日のコンディションを把握し、自分に足りない要素をピックアップできるまでにしました。
 

  • 調子が良い日の理由探し

これに関しては多くの要因が考えられます。就寝時間や食事内容、ウエイトトレーニングの負荷量の増減、練習後の自主練習の内容(守備練習を増やした、など)。
また、好きな音楽を聴くと良いのか、試合の具体的なワンシーンをイメージした後は調子が上がるのか、それともその逆なのか……etc
突き詰めてもキリがないくらいの要因があります。こうした分析を繰り返し、少しでも「調子が良い」状態に近づいていくようにしていきます。
逆に、調子が良いことと明らかに因果関係がない場合には、気にしすぎないよう促す場合もあります。
 
このように日常生活のことから自分の練習に至るまで、様々な場面に調子を上げる要素は隠されています。
 
勝利を再現性の高いものにするためにも取り組んでみてはいかがでしょうか。
 
最後までお読みいただきありがとうございました。

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