NEWS(最新情報)

2021年02月27日

ストレッチの時間がないと嘆くあなたへ/後編


 

文:赤山僚輔

今回は前回のブログの続き記事なります。
前回の内容は以下よりご参照ください。

ストレッチの時間がないと嘆くあなたへ/前編


前回はストレッチの時間がなかなかとれないような方々に対して、硬さを改善する方法を実践する前に硬くなる要因を整理して排除していこう。
 
このような話の導入をお伝えしました。
 
硬くなる原因としてご紹介したのは
・姿勢の影響
・食事など内臓機能の影響
・思考など頭の硬さや血流の影響
・自律神経の影響
・外的環境の影響
など。
 
その中で姿勢の影響と内臓の影響については前編で触れさせてもらいました。
 
今回は思考や自律神経、そして外的環境からの影響について考察していきたいと思います。
 

頭が硬いと何が悪い?

 
思考が柔軟ではない状態を比喩して”頭が硬い”。
このように表現することがあります。
これは見事に心身相関を体現した言葉だなといつも感じているのですが、思考が「〇〇じゃないといけない。」というような偏った状態にある時には、人からの意見にも耳を傾けられず、自分の都合の良いものしか見ないので、目も耳も凝り固まった状態になってしまいます。
 
普段スポーツトレーナーをしていると、どうしても首から下の筋肉や関節について考えることが多くなるかもしれません。
しかし、当たり前ですが首から上にも筋肉も関節もあり、JARTAのコンディショニングスキルコースでも応用している経絡などは頭から全身に繋がる経絡なども複数存在します。
 
焦点があったままでの目の使い方や、イヤホンの使いすぎ、大きな音がする場所に長時間の滞在などでも目のピント調整や眼球運動に司る筋肉の緊張や、耳周囲の筋肉、筋膜、そして経絡の問題が発生しやすくなります。
考えすぎることの弊害も合わせて考えるとわかりやすいですが、身体は血流が悪くなると筋肉の柔軟性が低下し、関節の動きや内臓の動きも低下していくのです。
 
過度な筋肉の緊張がそれらの要因になるように、頭を使いすぎることによって頭部や頸部の血流が一時的に増加し、相対的にそれ以外の部位の血流低下や慢性的に頭部の血流を必要とされることでリンパの流れの悪さから循環不全を呈することは、そこから波及した影響が身体の柔軟性低下に直接的にも関節的にも繋がっていくのです。

自律神経の切り口から考察する

この話の延長で自律神経の観点から身体に起きる変化を想定していくと、もっと具体的に整理がつきやすくなります。
情動系のいわゆるストレスは大脳辺縁系を介して下降性の伝道路を辿り、交感神経の興奮が胸椎領域の可動性を低下させたり、呼吸を浅くさせます。
交感神経の亢進は血管を収縮させる為、持続的な交感神経の興奮状態は全身の血流低下も引き起こします。
今の時期、末端の冷え傾向が強い選手は呼吸が浅く、交感神経優位になっている傾向があります。
また筋肉単体で考えても、交感神経優位な状態は筋肉が緊張している状態になります。
なんらかの外的な刺激などで交感神経優位な状態が長引くことは柔軟性を低下しにくくさせる大きな要因になるのです。
交感神経と副交感神経はどちらも適度に働いていることが理想的です。
現代の生活であれば本来副交感神経優位になっていくべき夜にスマホやPC作業など交感神経優位になってしまう要因が重なっています。
睡眠はとっていても疲れが取れている実感がない選手。
あるいはそもそもなかなか寝付けない。
このような選手は夜に副交感神経のスイッチがオンにならず、身体も緊張したままなので身体が休まることなく単にストレッチを継続するだけでは解決しにく身体環境になっている可能性が高いと思われます。
そのような状態で睡眠前に身体が硬いからとストレッチを継続していたのでは、逆効果になる場合もあります。
これまで関わってきた選手の中でも、真面目に寝る前のストレッチを継続しているけど硬さがなかなか解決しないと相談を受けてよくよく確認しているとストレッチで余計に興奮して睡眠の質が悪くなっているんだなと感じる事例もありました。
基本的には通常のスタティックストレッチはよほど優しく丁寧に実施しない限り、やや交感神経を優位にさせる可能性があることを認識しておく必要性があると思います。

自律神経とも繋がる外的環境による影響

最後に環境からの影響ですが、前述した自律神経の観点からも視覚や聴覚、あるいは、俗に言うストレスの影響で交感神経を優位にさせ身体を硬く、また柔軟性向上の妨げになる要因はあります。
また外的な環境とは心身に影響を及ぼす全ての要因が考えられ、それら全てをここで列挙することは難しいのですが身体に直接触れるものや触れる場所を考察するだけでもヒントがたくさんあります。
よく選手でも見受けられるのは睡眠姿勢が片方が下向きでないと寝れない。
といった選手が下側になる股関節の硬さがあり、同側の膝の痛みが出現しやすいといった事例もありました。
直接触れると言えば、もちろん靴や衣服の影響もあります。
常に圧迫のきつい着衣の影響で呼吸が妨げられることもありますし、シューズのフィッティングが悪く常に小指があたっているような状況では小指の外側から関連する膀胱の経絡の問題が発生しやすいといった側面もあります。
身体のどこの部位、特に皮膚の硬さなどを注意深く観察することでその選手がどのような外的な環境の影響を受けている可能性があるかを推察することはできます。
 
今回はストレッチ時間がないと嘆く前にできる準備があるという観点で様々な身体が硬くなったり、ストレッチ効果を妨げる要因についてご説明しました。
もちろんまだまだ他にも要因はありますので、このような切り口で関わる選手にヒアリングすることでこれまでよりも柔軟性を拡大するまでの期間を短縮することができます。
是非試行錯誤しながら選手に向き合ってみてもらればと思います。
 
そしてスポーツトレーナー自身が日常を振り返り、無限にある伸び代に向き合っていければと思います。
 
長くなりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。
 

JARTA公式HP
https://jarta.jp