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2019年12月05日

系統発生を学ぶ意味

文責:真木伸一

トレーナーを目指す、トレーナーとして仕事をするあなたは、選手のコンディションを改善する役割を担いますか?選手の不調、痛みを解決し、より良いパフォーマンスへと導くために学んでいることは、解剖学、運動学、それとも治療スキルでしょうか。
刷新されたJARTAのコンディショニングスキルコースでは、学校では習うことのない、系統発生、比較解剖といった ヒトの進化を学びます。そこには、どのような意味があるのでしょうか。
 
東京で活動する真木です。
 
JARTAのコンディショニングスキルコースでは、これまでの内容に無かった「関節アライメント評価」や「科学的根拠の用い方」が加わり、選手の不調に介入するポイントを、よりメカニカルに考察して導く手段をお伝えすることになりました。
 
一方で、従来から提唱している「関係主義的な捉え方」はより深みを増し、選手の体に生じる不調の解決方法をより多角的に捉えることができるような内容となっています。
関係主義的に捉えるというのは、全体を構成する構造を常に考慮しながら、要素と要素の間に生じる関係性・相互の影響を考慮することです。
つまり、不調の原因を局所の問題のみに求めず、全体(身体や身体を取り巻く環境)を構成する構造のつながりを考慮して、原因にたどり着く事をお伝えするということです。
 
トレーナーとして働く、もしくは働こうとするあなたは、学校やもしくは独学かもしれませんが、解剖学、運動学、生理学などを学ばれて、外傷学や診断学ももしかしたらよくご存知かもしれません。
関節アライメントの評価も正確にでき、メカニカルストレスの原因を取り除くことも可能かもしれません。
ただ、それだけで選手の不調の本当の原因を取り除けない事があるのではないでしょうか。
何度挑戦しても元に戻る腰痛、繰り返す肉離れ、原因不明の頭痛。あげれば思い当たる問題はいくつも出てくると思います。
このような問題を解決するために、そもそも、生命がどのように誕生し、ヒトがどのような進化の過程を辿ってきたのか知ることは、本来その構造が持つべき機能を知ることにつながり、器官同士のつながりを考慮した考えに行き着くことができます。
 
三木成夫は、その著書の中で「生物一般の原型としての土管様構造(図1)」を提示し、体壁系と内臓系を分け、内臓由来の感覚が動物、とりわけヒトにとってどれほど大切かを説いています。

 
 
ヒトの表情筋は「皮筋」と呼ばれる一端または両端が皮膚につく筋肉で、体を動かさずに皮膚だけを動かすことのできる筋肉です(犬塚則久「進化の退化学より」。
この表情筋は鰓弓由来の筋で構成されていて、「内臓の前端が突出した形が顔(図2)」ということになります(三木茂夫「内臓とこころ」)。

つまりは、目の前に立つ選手の表情には、その日の選手の内臓の状態が表されていると考えることができます。
東洋医学の経絡においても、顔面には非常に多くの経穴が存在し、臓腑の状態を評価・改善していくことに用いられているのは面白い事実だと思います。
内臓感覚が大脳皮質に昇ることはありませんが、「個体維持」と「種族保存」を二大本能とする動物にとって、内臓の働きが自身のコンディションを大きく左右することは考えるまでもないことです。
したがって、選手の表情をよく観察することで、その日の選手のコンディションがどういう状態であるかを推察することができるわけです。
なんとなく浮かない表情をしているな、良いことがあったはずなのに表情が冴えないな、目の下が浮腫んでいるな、口角が下がっているな、など、その状態から何を推察するのかは、関連のある臓器やその臓器の持つ働き、その臓器を支配する高位と同部の神経節から出る遠心性の信号のエラーなどに考えを向けることが可能になります。
 
その結果、「背中の筋肉の硬さを取るために、夜寝る前に食事を終えてからどの程度の時間を置いているか」という問診が生じたりするわけです。
 
 
もう少しメカニカルな例を挙げます。主な機能として呼吸を担う横隔膜は、エラの筋肉由来です。
 
エラがあったところから胸腔の下方を仕切るところまで下がり、肺の下方で酸素を取り入れるために働いています。
 
だから、この横隔膜を司る神経は頚部から伸びています。
横隔膜に隣接する組織としては胃や肝臓があげられ、腰椎部では大腰筋との筋連結もなされています。
つまり、大腰筋の硬さや、胃の不調などは、横隔膜の機能低下を引き起こす可能性があります。
このような横隔膜の機能低下は、頚部周囲の筋の強張りを引き起こしても全く不思議ではないということです。
現代の解剖学では、あるがままの姿を解剖して「それが何であるか」を学ぶことをしていますが、もっとものの本質を知るためには、その「成り立ち」を深く知る必要があるのだと考えています。
 
 
このような理由で、JARTAの新しいコンディショニングスキルコースにおいては、「ヒトの成り立ち」「肩帯・骨盤・股関節の構造特性」などを系統発生、比較解剖といった視点から説明することを行います。
 
ヒトが現世に誕生するまで、そして誕生から現在まで、どのような機能を獲得しながら生きながらえてきたのか、その構造のもつ意味とはどのようなものなのか、理解が深まれば、不調に介入する際の関係主義的な考えに幅を持たせることが必ずできるはずです。
 
なるべく早く、本質にたどり着くために、我々と共に学びましょう。
 
最後までお読みいただきありがとうございました。
 

コンディショニングスキルコース


 

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https://jarta.jp