沖本哲郎


 JARTAをはじめ、トレーナー活動をされているほとんどの方々とは経歴も経験も全く違い、大学の専攻は情報系、仕事もシステムエンジニアとしてずっと働いていました。そんな経歴でなぜ今トレーナー活動しているのか?ほとんどの人はそう思うでしょう。実際、前職を退職する際の挨拶周りでは全員にえっ?っと聞き返されました。
 
 畑違いの環境にいたためか、「スポーツトレーナー」と聞いてもどういう仕事なのかはっきりわかっていませんでした。小さい頃から選手としてスポーツをずっと続けてきていますが、スポーツトレーナーに直接指導されたこともなければ、出会ったこともありませんでした。ぼんやりとですが、試合の時に帯同し、怪我をした選手の応急処置をするというイメージしかありませんでした。

 そんな中、2014年タイで開催されるアジアビーチゲームズのビーチハンドボール女子のコーチの打診を受けたことがスポーツトレーナーに興味を持つようになったきっかけでした。ビーチバレーやビーチサッカーとは違いビーチハンドボールは、ハンドボール協会内の委員会として所属しているため、年間予算は雀の涙ほど。選手8人と監督、コーチのみの編成で渡航費は自費という状況です。通常のインドアのハンドボールとは待遇が全く異なり、ドクターやトレーナーも帯同しないということがわかりました。そこで、少しでも選手を万全の状態で試合に挑んでもらいたいと思い、トレーナーの知識を身に付けようといろいろなセミナーに参加しました。

 しかし、自分の中では何かしっくりくるものがなくモヤモヤしていた時に、JARTAに出会いました。BASICセミナーを受講しただけでも自分の体が十分に使えていないことが分かり衝撃を受け、「トレーニング=筋トレ」としてずっと選手生活をしてきたため、必要以上に筋力をつけ、可動域を狭くしていたことに初めて気づきました。

 JARTAと出会ってから大会までの期間があまりなく、ADVANCEセミナーI受講後に大会になってしまったこと、事前合宿がほとんどなく、現地入りしてからの僅かな時間しかトレーニングできなかったことで、選手のパフォーマンスを十分に上げることができず、結果は9チーム中5位と目標のメダルには届きませんでしたが、選手からは短期間で動きが良くなったと喜んでもらえこと、信頼関係が十分に築けたことが収穫でした。この経験が「スポーツトレーナー」としてやっていくことへの後押しとなりました。

 その後、ADVANCEセミナーII、IIIを受講していく中で、痛みを軽減させ、質の高いトレーニング指導をやりっぱなしで終わるのではなく、選手、チーム、そして周りの環境全てに満足させられるようにするのが大切であることを気づかせてもらえました。これはシステムエンジニアでも同じで、市販されているソフトウェアを販売するのではなく、お客様のニーズを聞く→現状システムの把握→分析→新システムの提案→結果→フィードバックを得る。スポーツトレーナーも同じように、選手のニーズを聞く→現状を把握→動作分析→トレーニングを提案→結果→フィードバックを得る。この点に関しては今までの経験が役立つと思っています。特に自分の経験では、小学生から高校生までは課せられた回数をこなすだけの腕立て伏せや腹筋をやってきていました。目的も意識もせず、非効率で逆に怪我に繋がる危険性があるにも関わらず、先輩から押し付けられ仕方なくやっていました。自分で考えてトレーニングできないジュニア世代の時こそ正しく指導できるスポーツトレーナーが必要だと思います。

 現状では、自分が所属している社会人ハンドボールチームで練習の空き時間を利用して、トレーニング指導を行っております。また、ハンドボールで築いた人脈で高校、中学のハンドボール部のフィジカルトレーニングに関わらせていただいております。

 仕事を辞めたことで、プロのトレーナーとしてやっていく決意を持ち、経験も知識もゼロからのスタートなので失うものは何もありません。むしろ伸び代しかありません。現役のハンドボーラーとして活動していることや国際大会を経験したことで選手の気持ちにより近いことが、自分の持ち味になっていけると思います。