金川美代子


 人生、予想外の事が起こることもある。自分がスポーツトレーナーの仕事に関わる事は、その一つだ。少なくとも1年前までは想像すら出来なかった。

 私は、自分の体を動かす仕事で人のお手伝いをしたくて看護師になると子供の頃から決めていた。その後10年以上看護師として働いてきた。

 日々の仕事の中で考えることは、患者さんの循環・呼吸・代謝・栄養のこと、患者さんやご家族への対応のことだった。

 そんな環境の中で、術後の患者さんが痛みを訴えた時、薬を投与しても痛みがとれず、さらに同じ薬を追加投与したり、それでも取れなかったら違う薬を追加するということがしばしばあった。その対症療法的な対応に違和感があり、薬以外にも痛みをとる方法がないものかと考えるようになった。そんな時、偶然オステオパシーという手技療法を知り、急性期の疼痛などにも使える手技があることに感銘を受けた。

 「これだ」と思い養成学院に入学し二年間学んだ。それは、解剖生理に基づいた療法で、神経や循環、代謝などを利用して痛みや不調にアプローチし心身を整えるアメリカ発祥の療法だった。いつか日本の病院でも導入できればよいと思い、まずは知り合いや紹介の方の訪問施術で自分の経験を積むことを始めた。腰痛や肩こり、下肢痛等の不調がある方の施術を行った。

 しかし、その場で痛みが取れても次の施術時にはまた同じ様な痛みが出ているという繰り返しがあり、施術後の生活習慣や身体の使い方を改善しなければ施術をしても対症療法になってしまうことがわかった。しかし生活指導や身体の使い方の指導といっても自分には極一般的な姿勢の注意やエクササイズの紹介しかできず、それも本当に効果的なのかも確信できぬまま過ごす時期が続いた。

 そんな時、自分がスポーツで怪我をしたことがきっかけでJARTAを知った。JARTAの理念や方針はオステオパシーと通ずるものが多い。今ある症状だけでなく、根本をとらえ、体・心・魂を三位一体で見ていく。そして病気や怪我を治療・予防しQOLを向上させる。

 JARTAの「全てはパフォーマンスアップの為に」という言葉はスポーツ現場だけでなく、日常生活や病院の中で痛みや不調に苦しむ人達にも当てはまることだと感じ心に響いた。自分の施術にも活かせるのではないかと思い、看護師でもセミナーに参加できるかをJARTAに問い合わせるとOKのお返事を頂いた。それからは、あっという間に今日までが過ぎた。セミナーは毎回毎回楽しくて新しい発見があった。自分の体を動かして実感したり、自分の頭で考えて試行錯誤することが楽しかった。内容は難しくてついていくのに必死だったが、講師や仲間のみなさんが助けてくれた。そして、自分の思考過程や身体が少しづつ変わってきた。

 こんな経過でJARTAのセミナーを受け始めたので、セミナーを受けている間も、自分がスポーツトレーナーになれるとは思っていなかった。今でも疑問に思うことがある。でも、勉強が進むにつれて気持ちに変化も出てきた。スポーツや自分の身体と真剣に向き合いパフォーマンスアップの為に心身を酷使するスポーツ選手のまっすぐな気持ちが大好きになった。

 そんなスポーツ選手はどんな身体なのか。どんな身体の使い方なのか。何を変化させたら何がどう変わるのか。動作分析を積み重ねJARTAの理論を使っていけば、私にもお手伝い出来ることがあるかもしれない。それは、病気をもつ人の痛みをとったり身体を変えたりする事にもつながっているのではないだろうか。

 自分が関わることで、選手のパフォーマンスが変わったら、選手だけでなくその選手に関係する多くの人に喜んでもらうことが出来るだろう。そんな事が起こったら自分自身もどんなにうれしくてやりがいがあることか。

 私は、スポーツトレーナーを昔から目指してきたわけではないし、今まで少し違うフィールドで働いてきたのかもしれない。でも、人の身体の事を真剣に考え続けてきた結果、自然の流れの中で必然的にたどり着いたのがスポーツトレーナーだと思っている。

 今はまだ知識も経験もないが、自己鍛錬を続けていけば、スポーツ選手のパフォーマンスアップの助けが少しでも出来るようになると信じて勉強を続けていこうと思う。これからどんなことが起こるのか楽しみだ。