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2015年09月19日

指導の本質〜イタリア研修を終えて〜

2015年9月1日から8日までの1週間、イタリアのローマ・ペスカーラ・ミラノにてJARTAイタリア研修を実施しました。
今回で第3期を迎え、様々な方のご協力のお陰で無事に終了することができました。
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JARTAイタリア研修では、インテルやラツィオなどサッカーのセリエAのチームをはじめ、モンテシルヴァーノなどフットサルのセリエAなどイタリアで一流とされるチームの施設やトレーニング・試合の見学、コーチたちとのディスカッションやレクチャーを受けるなど、トレーナーとして非常に貴重な経験ができます。
更にそれだけではなく、実際に現地のチームにトレーニング指導するという経験もしていただいております。
 
研修参加者の方にとっては、楽しくもあり、辛くもある一週間になります。
 
この研修での主な目的は、知識や技術の向上よりも、「指導とは」にあります。
もちろんそれを学ぶ中で知識や技術の向上も起こりますが、それはあくまで付加的なものと考えています。
 
僕は指導力はトレーナーにとっては本当に重要な能力だと考えています。
なぜなら、いくら技術や知識が豊富にあっても、指導力がなければ選手には何も伝わらないからです。
トレーナーを志すなら、知識・技術に並行して指導力を高める訓練も必要なのです。
JARTAではアドバンス3でプレゼン力という形でそれを勉強していただいていますし、それまでの講習においても非常に重要なファクターとして織り交ぜています。
 
指導とは、教育です。
教育とは、こちらの意図や目的や方法、そしてトレーニングの意図を伝え、理解・実践・継続してもらうことです。
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伝えるとは、マニュアル通りに「言う」ことではありません。
「言う」の主体は自分にあるのです。
 
そうではなく、主体は常に選手。
 
いくらこちらが分かりやすく、素晴らしいことを言っていても、選手が理解・実践・継続できなければ無意味なのです。
 
イタリアでは、それが上手くいっているかを選手が態度で示してくれます。
日本に比べて非常にそれが表在化しやすい国民性です。
 
分からなければもうふざけだしますし、逆に選手が「これは良い」と思えばめちゃくちゃ真剣にやってくれます。
ある意味、素直です。
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その点、日本では選手がそういったことを態度に出すのは稀です。
あんまり分かっていなくても、周りに合わせてある意味「分かったフリ」をします。
 
それゆえ、トレーナー側の指導力の低さが仮にあったとしてもそれが表在化、つまりトレーナー側が気づきにくい環境にあると言えます。
 
そういう下地がある環境だからこそトレーナー研修をイタリアでやることにしました。それも知識や技術ではなく、「指導」について学ぶ場として。
研修参加者は、程度の違いこそあれ、毎回この壁にぶつかります。
 
上手くいかなかった時、これを単に「イタリアでの指導は初めてだから」とするとご本人にとって何の糧にもなりません。
指導の本質に国や環境、競技レベルは関係ありません。
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今回から研修に協力して下さるようになったダンテさん(フットサル・バスケのセリエAトレーナー)はこう言います。
 
「とにかく選手にこちらを向かせること。選手が、”このトレーナーが言ってることは自分にとってめちゃくちゃ重要なことなんだ”と理解することが重要なんです。」「そしてそのために最も重要なファクターが「選手への愛情と情熱」なんです。」
 
例えば、通訳を介しての指導で起こることは、通訳に向かって話してしまうこと。
これが初期に最も起こしてしまいやすい失敗です。
トレーナーが話す相手は選手。
言葉が通じなくても、選手に向かって愛情や情熱を伝えるためには、選手に向かって話すことが重要なんです。
それを全身を使って表現する。もちろん声もです。
そうすると、選手は言葉が分からなくてもこちらの目を見て話しを聞いてくれます。
 
これは小手先の技術では通用しません。
仮に選手に向かって話していても、何を言うかを文章にして覚えてそれを話しているようではやっぱり通用しないんです。
 
具体的に研修参加者のみなさんの指導にどんなことが起こって、彼らが何を感じたのかは彼らのレポートに書いてくれると思うので、詳しくはそちらに譲ります。
 
最後に、この研修で最も重要なことは何か。
それは「研修終了後にどう成長するか」です。
「あの研修に行っていなければ今の自分はない」と言えるぐらい、研修での経験を今後に活かしていただきたいです。
 
イタリアでの経験は、そう言えるだけの課題を得られる研修だと思っています。
 
次回の研修は2016年3月頃(未定)を予定しています。
※参加資格はJARTA認定資格の保持者、そして明確な参加目的を持っていることです。
 
追伸。
今回のイタリア渡航では、セリエAラツィオやインテルユースにてトレーナーやコーチとお互いに簡単な講義をしました。
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その時に得たことはまた僕の個人ブログで掲載したいと思います。
また、僕の講義の様子は会員限定動画にて近日中に配信する予定になっています。
イタリアのトップコーチたちがどんなことに興味を抱き、それに対して僕がどんなプレゼンをしたのかなどを観ていただけるかと思います。
 
 
 
JARTA代表
中野 崇