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2016年07月30日

チーム競技に関わるトレーナー・指導者が知っておきたい選手の脳反応

◆あなたの声掛けは選手にとって適切ですか?

 
成果を上げるチームと言うのは必ずと言っていいほど特徴があります。
トレーナーや指導者がかける言葉ひとつで、選手のパフォーマンスが変化してしまう、そう言った経験をされたことはありませんか?

強いチームほど、一貫して選手を良い方向に導けるように徹底されています。
 
東海地区で活動する認定スポーツトレーナーの田中紀行です。
 
今回は、チーム競技におけるトレーナーや指導者の関わり方について、重要なポイントを脳反応の視点からお話ししたいと思います。
 

【100%の力はベストではない?】

わたしたちの教育は、義務教育を含めてレールに乗った形で進められます。
特に学生時代のテストは、100点が最高得点であり、満点を目指して勉強します。
逆に言うと100点という上限設定がなされています。ここに一つの落とし穴があります。
 
スポーツの世界では、最高100点という考え方が、問題になるケースがあります。100点をベストパフォーマンスとするならば100%以上の力を出すことを自然に諦めてしまうことがあります。
 
分かりやすい例で、バレーボールのレシーブの場面を思い出してください。
トップレベルの選手が明らかに届かないボールに対して飛び込む場面を見られたことはありませんか?
明らかに届かなければ、飛び込まなくていいのに…そう思ってしまいがちですが、そうすることで人間の脳は自分の能力を無意識的に抑え込む傾向があります。これでは、拾えるボールもミスしてしまいます。
 
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(バレーボールの練習風景)
 
言い換えると強いチームには勝てない、相手が強すぎるというイメージは、100%以上のパフォーマンスを発揮することが難しくなります。つまりマイナスの思考がマイナスの結果をもたらします。
 
100点(100%)の力を発揮してもまだやるべき事はあります。そう言った関わりや声掛けは、トレーニングへのモチベーションを上げ、選手を肉体的にも精神的にも強くします。

100点からのマイナス減算の考え方でなく、積み上げていくプラス加算の考え方を中心とした戦略を考えて見てください。

 
 

【チームの気持ちを一つにする】

チームメンバーの気持ちを一つにするというのは、表面的な言葉で成し遂げられる程、簡単ではありません。
チームのレベルを上げるには、チームメイトに興味を持ち、互いに好きになる神経群に働きかけることが重要となります。これらの活動は、前頭前野の判断力を高め、自ら成し遂げる自我の意思が成長し、チームに貢献する勝負強さや考えが生まれると言われています。
 
具体的な例は、「なるほど」「そうだね」と言った気持ちを込めた会話を心掛けることが重要です。
これは『同期発火』という脳反応を高めています。
悲しい話やいらいらする話を聞くと自分も同じような気持ちになる、また誰かが喜んでいるとなんだか自分も嬉しくなると言う経験はありませんか?これらは『同期発火』の作用によるものです。
 
試合中やトレーニングの際も同様で、チームメイトがミスをした際に、マイナスの言葉、仕草や表情を浮かべるとマイナスの結果が連鎖するように、それを防ぐプラス方向の声掛けが有効になります。
マイナスの言葉の代表例では、観客のため息に切れたクルム伊達公子選手の話は有名ですね。

プラス方向の声掛けは脳に『報酬』という概念を与え、より勝負強さや考えが生まれることでパフォーマンスアップに繋がります。

 
 
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(名古屋大学女子ラクロス部の練習中のミーティング:互いに褒め合う事を基本とします)
 
 
共通した大きな目的を持つ
チームメイトを尊敬する・好きになる・褒める
監督・コーチを尊敬する
悪口を言わず、プラス方向の言葉に転換する
ミスを責めない・励ます
 
トレーナーや指導者として以上のような働きかけを選手に浸透できる事はとても重要なことになります。
 

【まとめ】

普段何気なく行っている活動を少し考察すると脳の観点からも戦略的にチームを成長へと導くことができます。
100%以上を常に意識し、チームの気持ちを一つにする事でより良いチーム環境を作ることもトレーナーや指導者としての重要な役割です。他者へのリスペクトを忘れず、小さな声掛けから是非取り組んでみてください。