JARTAトレーニング理論










PWUとは、プレ・ウォーミングアップの略称です。
つまり、チーム全体で行うウォーミングアップの「前に」、各自が自分のベストパフォーマンス発揮のために行う事前個別ウォーミングアップのことです。
JARTAでは、チームやパーソナルでサポートをスタートする際、基本的にはまずこのPWUの定着を目指して指導・教育を行います。

このPWUのメリットは非常に重要なものです。
まず選手自身が自分の身体や動きに関心を向けるようになります。JARTAトレーナーが指導するPWUの動きは、柔軟性向上を目的としたものから、動きづくりのための刺激を身体に入れるものまで多岐に渡りますが、それらの中から今の自分自身に最も必要とされるものを幾つか選択して実施することを要求されるからです。

次に、PWUの導入は、怪我の発生を防ぐことに大きく役立ちます。
怪我が発生する多くの要因は、疲労や日常の動きの癖によって固まっている部位に急激に強い負荷がかかったり、同じ動きばかりを繰り返すことによる局所への負担の蓄積と言われています。
PWUは、特に中枢部である背骨や肩甲骨周り・股関節などの柔軟性を向上したり、それらが効率よく機能するための刺激を入れることにより、そういった要因による怪我の発生を抑制します。
また、選手自身が自らの身体の異変を事前に察知して早期に対処することに繋がります。

また、多くのPWUの項目はインナーマッスルが優位に機能するための刺激を含んでおり、パフォーマンスにおいてしなやかさと力強さの共存に必要な能力を構築することに役立ちます。


スポーツにおいて、現在そのパフォーマンスを高めるためにあらゆる方法論が世に出回っています。
研究熱心な指導者の方や選手ほど、その情報量の多さ故に何が正しいのか、有効なのかに迷われることが多いと思います。
なぜなら競技力を構成するものは、筋力・柔軟性・スピード・持久力・バランス(軸)・リロード(体勢を修正)・アジリティ・技術力・認識力など多岐に渡り、スポーツ科学の分野においてはそれぞれに関して個別トレーニング方法が存在し、さらにそれぞれが多様な発展を遂げているからです。

競技力向上において、もちろんそれぞれの能力の高さは非常に重要です。
しかし、実際の競技場面において選手が最も要求されるのは、それぞれを「同時に実現できる能力」です。
つまり、いくら大きい筋力を持っていても、力を発揮するときにスピードが落ちれば試合では使えませんし、力を発揮する際にバランスが崩れればそもそも力は十分に発揮できません。他の項目も同様のことが言えると思います。

様々な要素を「同時に実現できる能力」。

JARTAのこれまでの活動において、この能力がパフォーマンスの優劣を規定する大きな要因であることが分かってきました。
そして同時に実現できる要素の数や精度の高さが競技レベルに直結していることが分かってきました。

これをJARTAでは「アブレスト能力(並立能力)」として定義しました。
そしてアスリートに必要な能力の一つとしてトレーニング対象としています。
JARTAの全てのトレーニングは、アブレスト能力を非常に重要なものとして位置付け、トレーニングを実施することでこの能力が向上するようにデザインされております。

競技に必要な能力を分解し、個別に細かくトレーニングすることはもちろん大切ですが、この「アブレスト能力」を基本的なトレーニング段階から「能力の指標」として対象化し、向上させることが重要と考えています。


固めるか、柔らかくか。
よくこんな議論を耳にします。

JARTAでは、「アブレスト(並立)能力」という概念で表している通り、どちらか一方ではなく、どちらも実現できる能力が必要だという考えを持っています。

そしてアブレスト能力に並んで、もう一つ重要な観点があります。
それは「ハイパフォーマンスゾーン」です。

「固めるか柔らかくか」の議論のように、平面的なものではいつまでたっても答えは出ないでしょう。
なぜならどちらも人間が保持する重要な能力であり、スポーツにおいてはどちらも要求されるからです。どちらか一方だけで完結できる競技などほとんどないはずです。

重要なのは、「固めるか柔らかくか」ではなく、その中身です。
JARTAが重要視しているのは、以下の三つのハイパフォーマンスゾーンです。

1 タイミング
どんなに固める能力が高くても、どんなに柔らかく動く能力が高くても、どちらの能力を保持していても、それぞれを発揮するタイミングを間違えると、高いパフォーマンスは発揮できません。
固めるべきタイミング、柔らかくしておくタイミングが、一連の動作の中では存在します。
例えばサッカーのシュートの場面だと、しなやかに動く中でもボールとのコンタクトの一瞬においては体幹部分や足首などは一定の固定性が発揮される必要があります。(どのようなシュートを打つのかによって、それらは流動的に変化します)

2 程度
高いパフォーマンスを発揮するには、いくら固めるべきタイミングであってもその度合いは限定されます。また、逆に柔らかく動く必要がある際にも、脱力し過ぎるとパフォーマンスとしては低下します。
つまり、固めるにも柔らかくするにも最適な程度があるということです。
それを逸脱して「固めすぎる」「脱力し過ぎる」とやはりパフォーマンスは低下しますし、当然怪我の要因となります。

3 部位・セパレート
スポーツの複雑な動作においては、均一的に全身を固める、全身を柔らかくするというタイミングは極めて限局されます。
つまり、ほとんどの動作では、どこかだけ固定し、他はしなやかに、という能力が要求されます。
例えば野球のピッチングであれば、腕全体はしなやかに扱いますが、リリースの瞬間においては手首と指だけは固定しなければせっかく生み出した加速を無駄なくボールに伝えることが出来なくなります。

ハイパフォーマンスの実現において、アブレスト能力と合わせて、このハイパフォーマンスゾーンという考え方は欠かすことがきないものです。


アロースとは、Arouse [ 呼び起こす・刺激する・目覚めさせる ] という意味です。

JARTAで使用しているアロースメニューとは、身体を効率良く動かすために必要な箇所に短時間で刺激を入れるために行うセルフメニューのことです。

競技における全ての練習メニューを、刺激が入った状態で実施してもらうことを目的に実施します。練習前、違う練習に移る時、そして自分の順番を待っている間や練習のセット間に自分で簡単に30秒ほどでできるものをセット化します。特にチームでの練習においては、自分の順番を待っている時間を無駄にしている選手がたくさんいます。これは非常に勿体無いことですし、待っている間に身体が固まってしまえば、当然怪我にもつながります。イチロー選手など、良い選手はどんな時にも常に何らかのストレッチをしたりして
身体に刺激を入れ続けています。
JARTAのトレーニングサポートでは、そのようなチーム文化を構築することも実施しています。

従来と同じ練習内容でも、身体に良い刺激が入って、効率良く動ける状態で行う練習は無駄な力みが抜けたり、インナーマッスルが働くような状態で実施できることになり、練習の質そのものが高くなりますし、練習で身につけようとしている技術の習得過程そのものの効率化が図れます。

アロースメニューの内容は、導入期は3種目程度を推奨しています。
選手の習熟度やどれだけ習慣化されているかにより、その内容は変更していくと良いでしょう。


External cognitive Coordination Training の略称です。

スポーツにおけるパフォーマンスを向上させる上で、「股関節を上手く使える」などの本質的な身体操作能力は非常に重要ことですが、実際の競技場面においては、それらの動きはほとんど無意識になされなければ意味がありません。つまり、股関節を上手く使おう、ということを意識している余裕など競技場面ではありません。

もちろん無意識にそう言ったことができるほど練習やトレーニングを積み重ねることの重要性は言うまでもありません。
片や、いくらスクワットなど基礎的なトレーニングで良い動きが獲得できていても、例えばボールを持ってしまうと身体が緊張して上手く扱えない、身体が上手く動かないという現象もスポーツではよくあることです。
この原因となっているのが、把持性緊張です。「ボールを持つ」という行為そのものが身体の緊張を引き起こしてしまう現象です。

この根底にあるのが、外的認識力のエラーです。
例えばボールを持つこともそうですし、相手がいることそのものもこの引き金になり得ます。外的な刺激に対して適切に身体の状態を反応させることができないと、このような状態に陥ることになります。普段から、「動きの認識の中心」が身体ばかりになっていることもこの要因の一つだと考えられます。実際の競技場面では、ボールや相手の動きに身体を対応させるという「外部の動きが中心になって」身体をコントロールすることもかなりの頻度で要求させるはずです。

また、いわゆる「身体が上手く使えない選手」に対して、いくらこのように動かしてください、と指導しても、やはり上手くいかないことは多く、その解決のためには一般的には積み重ねしかないと言われています。

JARTAでは、このような現象に対処できるようになるため、「Exコーディネーショントレーニング」という方法を用いています。

実際にボールなどを持ってボールを中心にして身体を動かしたり、相手の動きに対応して自分の身体を反応させるというトレーニング体系です。動きの認識の中心を身体ではなく、外的な要因に置くことで、外(物、相手)に意識を向けた無意識の動きを誘発することを意図しています。

このトレーニングは、格闘技やサッカーなど相手への対処が重要である競技、野球など道具を扱う能力が重要となる競技において、良い反応が導き出されます。


全てのパフォーマンスは、具体的な競技能力と、その土台となる本質的能力で構成されています。
もちろん競技の勝敗に直接影響するのは具体的な競技能力です。
テクニックや戦術遂行能力など、勝負においてこの能力の向上が重要であることは言うまでもありません。

ただし、アスリートにとって競技の勝敗と同じぐらい重要なこととして「伸びしろ」というものがあります。
つまりその競技能力をどこまで伸ばすことができるか。
これは我々がこれまで出会ってきたアスリートたちに共通して重視されている部分です。
そしてこの伸びしろを規定するのが「本質的能力」です。

本質的能力は、どのように身体の各所を操作するのか、どのように全身の重心を操作するのか、どのような力加減でパワーの出力を制御するのかなど、競技能力の土台となる根本的な身体操作能力のことです。
この能力は、単純に競技の練習だけを繰り返してもなかなかうまく向上してくれません。
なぜなら、本質的能力は自動的に、無意識に発揮されなければならないものだからです。
自動的に発揮されるべきものを向上するためには、一度意識化し、内的や外的な認識をフルに働かせた状態でのシンプルなトレーニングを繰り返し実施してゆく中でそれらが学習され新たに自動化するというプロセスが必要なのです。

競技の練習では意識することや、やらなければならないことが多すぎるため、選手は身体の操作や感覚だけに意識を集中することができません。
選手の本質的能力を高めるためには、身体への認識に集中できる環境を作り、丁寧にトレーニングを繰り返す必要があるのです。

この部分がおろそかになっていると、中学ではスターだったのに、高校では通用しなくなった、というような現象が起こります。

JARTAでは、この本質的能力の向上のためのトレーニングを、「競技能力向上のための下部構造」として非常に重視しています。
JARTAのトレーニングが実際の競技動作とは全く異なるように見えるトレーニングであっても、JARTAトレーナーによる綿密な分析により、必ずその競技動作向上の下部構造の構築トレーニングになっていますので、ぜひ継続して実施してみてください。